コンデンサの働き
電荷をためる・電圧の変化を滑らかにする — 47µFと0.1µFはなぜ値が違うのか
1. 電荷と電界 — コンデンサの土台になる考え方
すべての物質は、正の電荷を持つ原子核と、負の電荷を持つ電子でできている。ふだんは正負の電荷の量が釣り合っていて、外から見ると電気的に中性に見える。しかし、何らかの方法で正の電荷と負の電荷を空間的に引き離すと、その間には電界(電場)が生じる。
電界がある空間に電荷を置くと、その電荷は力を受ける。この力を、ある基準点からその点まで電荷を動かすのに必要な仕事として表したものが電位であり、2点間の電位の差が電圧である。乾電池の+極と−極の間に電圧があるのは、+極側に正の電荷が、−極側に負の電荷が偏って蓄えられているためである。
帯電した物体を導体に近づけると、導体内部で自由に動ける電子が、引き寄せられたり反発したりして再配置される。近い側の表面には反対符号の電荷が、遠い側の表面には同符号の電荷が現れる。この現象を静電誘導と呼ぶ。コンデンサの2枚の電極の間で起きているのも、本質的にはこの静電誘導と同じ「向かい合う電荷が互いを引き合う」現象である。
2. コンデンサは「電荷をためる部品」
コンデンサは、2枚の金属板(電極)を、電気を通さない薄い層(誘電体)を挟んで向かい合わせただけの、単純な構造の部品である。電極間に電圧をかけると、片方の電極に正の電荷、もう片方に負の電荷が集まる。向かい合う正負の電荷は互いに引き合うため、電圧を取り除いても、しばらくはその位置にとどまり続ける。これが「電荷をためる」という状態である。
抵抗は「電流の流れにくさ」を決める部品で、電気をためない。一方コンデンサは、電流の流れやすさではなく「電荷をためる/放す」という性質を持つ部品である。
2-1. どれだけためられるか — 静電容量
コンデンサにためられる電荷の量 Q は、かけた電圧 V に比例する。この比例係数を静電容量(キャパシタンス) C と呼び、単位はF(ファラド)である。
Q = C × V
同じ電圧をかけたとき、Cが大きいコンデンサほど、より多くの電荷をためられる。回路に使われる47µFや0.1µFという数値は、このCの値である(µF=100万分の1F)。
この静電容量Cは、コンデンサの構造だけで決まる。平行に向かい合う2枚の電極でできたコンデンサでは、Cはおおよそ次の関係で決まる。
C ∝ (電極の面積) ÷ (電極間の距離) × (誘電体の誘電率)
- 電極の面積が大きいほど:向かい合う電荷の数が増えるため、容量は大きくなる
- 電極間の距離が近いほど:向かい合う正負の電荷が強く引き合うため、容量は大きくなる
- 誘電体の誘電率が高いほど:電極間の電界が弱められ、同じ電圧でもより多くの電荷を蓄えられるため、容量は大きくなる
電極の面積を大きくしたり、電極間の距離を極限まで縮めたり、誘電率の高い特殊な誘電体を使ったりすることで、限られたサイズの部品でも大きな容量を実現できる。この作り方の違いが、後述する電解コンデンサとセラミックコンデンサの性質の違いにつながる。
3. 充放電 — コンデンサが「電圧の変化」を嫌う理由
Q = C × V の関係から、コンデンサの電極間の電圧を変化させるには、たまっている電荷Qの量そのものを変化させる必要があることが分かる。電荷の移動には時間がかかるため、コンデンサの電圧は瞬間には変わらず、なめらかに上がり下がりする。電圧が上がっていく過程を「充電」、たまった電荷を外に出しながら電圧が下がっていく過程を「放電」と呼ぶ。この充放電の性質が、電子回路でコンデンサが使われる理由の中心になる。
電源ラインに一瞬だけ電圧が跳ね上がる(またはへこむ)ノイズが乗ったとき、コンデンサはそのノイズ分の電荷を吸収したり、逆に放出したりして、電圧の急な変化を打ち消そうとする。結果として、コンデンサの先につながる部品には、より滑らかな電圧が届く。
4. 電源フィルタとデカップリング — 47µFと0.1µFの違い
第2章・第4章で使った2つのコンデンサは、どちらも「電源ノイズを減らす」という目的は共通しているが、狙っているノイズの種類が異なる。
| 項目 | 47µF(電源フィルタ) | 0.1µF(デカップリング) |
|---|---|---|
| 使用箇所 | PL-IRM1838B の VCC-GND間 (100Ω抵抗と組み合わせ) |
DHT20 の VDD-GND間 (センサーのすぐ近く) |
| 種類 | 電解コンデンサ(極性あり) | セラミックコンデンサ(極性なし) |
| 構造上の特徴 | 電極を薄いフィルム状にして巻き、面積を極端に稼ぐことで大容量を実現 | 誘電体に高誘電率のセラミックを使い、小型のまま容量を確保 |
| 得意なノイズ | 比較的ゆっくりした電源の揺れ・リプル | 高速で短い電源の揺れ(通信時のスパイク等) |
電解コンデンサは、電極を巻いて面積を稼ぐ構造上、内部の配線が長くなりやすく、高速な電流の出入りには追従しにくい。逆にセラミックコンデンサは容量は小さいものの、構造がシンプルで内部抵抗・インダクタンスが小さいため、高速なノイズへの応答性に優れる。そのため実際の回路では、大容量(電解)+小容量(セラミック)を併用することも多く、狙うノイズの周波数帯によって使い分ける。
5. コンデンサがない場合、何が起きるか
DHT20のようなI²Cデバイスは、通信のたびに一瞬だけ大きな電流を必要とすることがある。デカップリングコンデンサがないと、この一瞬の電流要求に電源ラインの供給が追いつかず、電圧が瞬間的に落ち込む。
6. 極性に注意 — 電解コンデンサとセラミックコンデンサ
電解コンデンサは、片方の電極表面に化学的な処理で極薄の絶縁膜を作り、それを誘電体として利用することで大容量を実現している。この絶縁膜は特定の向きに電圧をかけたときだけ安定して存在できる構造のため、電解コンデンサには極性がある。一方セラミックコンデンサの誘電体はセラミック自体であり、向きによる制約がないため極性がない。
| 種類 | 極性 | 特徴 | 今回の使用例 |
|---|---|---|---|
| 電解コンデンサ | あり(+/−を間違えると故障・破裂の恐れ) | 大容量を得やすい。サイズが大きい。 | 47µF(PL-IRM1838B電源フィルタ) |
| セラミックコンデンサ | なし | 小容量中心。応答が速く、サイズが小さい。 | 0.1µF(DHT20デカップリング) |
電解コンデンサの絶縁膜は、決められた向きに電圧がかかることを前提に化学的に形成されている。極性を逆に接続すると、この絶縁膜が破壊される反応が内部で起き、発熱・破裂につながる場合がある。第2章の配線で「+をVCC側、−をGND側」と明記した通り、必ず極性を確認して接続する。
📋 まとめ
| 項目 | 正しい理解 |
|---|---|
| 電荷と電界 | 正負の電荷が空間的に引き離されると電界が生じ、電位差=電圧が生まれる |
| 静電容量C | Q = C × V。電極の面積・間隔・誘電体の誘電率で決まる |
| コンデンサの基本動作 | 電極間に電荷をため、電圧の急な変化を滑らかにする |
| 電源フィルタ(47µF) | 抵抗と組み合わせ、比較的ゆっくりした電源の揺れ・リプルを吸収する |
| デカップリング(0.1µF) | センサーの近くに置き、通信時などの瞬間的な電流要求に素早く応答する |
| 電解コンデンサ | 絶縁膜構造のため極性あり。大容量が得意だが、高速な変化への追従はセラミックより弱い |
| セラミックコンデンサ | 極性なし。小容量だが応答が速く、高速ノイズに強い |